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へら釣り選手権大会
第39回(2024年度)全国大会 大会結果
シマノ ジャパンカップ へら
第39回(2024年度)全国大会 大会詳細
楠 康一選手、巧みな1メーターセットの釣りで初優勝!!
1位 楠 康一 選手/2位 天田 浩司選手/3位 西沢 良純 選手
日時 | 2024年10月12日(土)・13日(日) |
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場所 | 筑波流源湖(茨城県) |
主催 | 株式会社シマノ |
天候 | 晴れ |
伊藤さとしの眼
筑波流源湖、過去に開催した記録はあるがそれは第2回大会。1985年9月に遡る。水面積1万坪を超え、最深部は9メートルと深場も有するフィールド。今大会では釣り方でタナ1メートル規定はあるが、使用ロッドは7尺から24尺までと様々な釣りが展開できる。
会場となる「南中央桟橋」は桟橋の北向き、水深7メートル〜8メートルとドン深となる。一方、事務所向きは中央部に「馬の背」と呼ばれる浅場があり、起伏に富んでいる。そんな釣り場の特徴もあり、選手は引き当てた釣り座でどんな釣りをするのか? 釣り座に応じた釣り方セレクトも重要になる。
「様々な釣り…」試釣を重ねた選手はその選択肢をこう語った。
①タナ1メートルの両ダンゴ釣り ②タナ1メートルのセットの釣り ③チョウチン両ダンゴ釣り ④チョウチンセットの釣り ⑤ペレットの宙釣り、これだけの釣り方があり、更に使用するロッドの長さを加えれば、今までにないことが起こる可能性は高い。
さて、各選手はどんな釣り方で攻めるのか? 2日間この大会に張り付き、釣り人目線で大会を振りかえる。
第1試合
Aブロック(桟橋事務所向き)
比較的水深が浅いためか選手も1メーターセットが6名、チョウチンセットが2名、タナ2本の両ダンゴが1名と釣り方は分かれた。開始5分で、ほぼ中央に位置する楠選手が数枚を釣り、その後隣の濱嶋選手が続いた。両選手とも10尺から12尺の竿で、回転良くエサを打つ。一番手前には前年度優勝者の黒田選手が入り、17尺タナ2メートルの釣りで良型を狙う。しかし、魚の動き出しは悪く苦戦。最終的には12尺1メーターセットでコンスタントに釣り抜いた濱嶋選手が22.12キログラムでトップ。2位は20.77キログラムの楠選手、3位は17.35キログラムの石原選手となった。
Bブロック
北桟橋向きの水深が7~8メートルあるポイント。選手の釣り分けはチョウチンセットが5名、チョウチン両ダンゴ3名、タナ2メートルが1名となった。18尺以上を使用する選手が合計5名と今まででは見ることがないほど長尺が目立った。また、18尺から19.5尺でのチョウチンセットも珍しい。開始後30分もすると俄然長尺組が絞り始めた。最終的に1位は21尺チョウチン両ダンゴで16.29キログラムの天田選手、2位は隣に入った柴崎選手で21尺チョウチンセットで13.55キログラム、3位も19.5尺のチョウチンセットと長尺のチョウチンセットが安定した釣果を上げた。
Cブロック
同じく北桟橋向き。このブロックはチョウチンセットが8名、1メーターセットが1名となった。チョウチンセットの使用ロッドは中尺が多く、13尺から15尺が目立った。スタート直後は中央部に入った選手のウキの動きが良く、徐々に奥のポイントも竿が立つという展開。最終的には前年度シード選手の吉田選手が12尺で12.86キログラム、2位の佐々木選手も同じく12尺で12.22キログラム、3位の奥村選手も12尺で11.95キログラム。上位3名が全く同じ使用ロッド、釣り方で独占となった。これは水深に12尺チョウチンのタナが一番合っていたことを証明した。
第2試合
Aブロック
第1試合の結果を受けて1メーターセットが5名、チョウチンセットが3名、13尺ペレ宙が1名となった。そして、使用ロッドも短くなり9尺が4名と手返し優先の釣りが主流となった。トップ通過は小笠選手の10尺1メーターセットでこの日の最高釣果23.53キログラム、2位は石原選手の9尺1メーターセットの21.72キログラム、3位酒寄選手の9尺チョウチンセットの17.28キログラム。この酒寄選手の釣りは短いハリスに大きめのウドンを付ける釣り方。この釣り場では圧倒的な強さがある。同様の釣り方がこれからも続けば爆発的な釣果も期待できる。
Bブロック
1メーターセットが6人、チョウチンセットが2名、15尺でのペレットを使用した宙釣り(ペレ宙)が1名となった。特徴的なのはチョウチン釣りでの使用ロッドが短くなった点。第1試合では18尺以上が5名いたが、今回はゼロ。長くても13尺という展開となった。その理由は朝方は魚の層も深い位置になるが徐々にタナが上がるため。選手はその動きを予測して使用ロッドを決めた。タナが違えば地合いも続かない。トップは第1試合同様に濱嶋選手が9尺の1メートルセットで15.19キログラム、2位は小寺選手が8尺1メーターセットで14.97キログラム、3位には楠選手が9尺で14.05キログラムとなった。
Cブロック
1メーターセットが2名、チョウチンセット6名、15尺ペレ宙が1名となった。この時間帯から喰わせエサにはウドンではなく「トロロコブ」をつける「ヒゲセット」も見られるようになった。比較的スタートダッシュが効いたのは西沢選手のやや沖打ちのセットの釣りで、12尺のロッドを使用して14.20キログラムを、2位の天田選手は第1試合では21尺を使用したが今回は10尺と釣り方・タナを大きく変えての13.19キログラム、3位の戸井田選手も同様に10.5尺のチョウチンセットで13.15キログラムを釣った。特に西沢選手の後半はコンスタントに釣り周囲を圧倒した。
第3試合(大会2日目)
Aブロック
この日1番の注目ブロックとなった。それは暫定上位者の楠選手、小笠選手、西沢選手、濱嶋選手がバッティング、ここでの順位ポイントが重要になる。昨年シードの吉田選手もこのブロック。釣り方は1メーターセットが7人、チョウチンセットが3人とはっきり分かれた。コンスタントに、そして確実に釣り込む楠選手・西沢選手・小笠選手、やや離されて濱嶋選手が続いた。最終的には1位は楠選手で23.43キログラム、2位は西沢選手で22.50キログラム、3位は小笠選手が19.22キログラムで釣果をまとめた。吉田選手残念ながらブロック8位となり涙を飲んだ。
Bブロック
1メーターセットが3人、チョウチンセットが2人、チョウチン両ダンゴが3人となった。時田選手はスタート時24尺のチョウチン両ダンゴで今まで全く攻められていないエリアを狙う。また、前日の第1試合で好印象を掴んでいた天田選手は迷わず21尺両ダンゴで攻めた。この試合で2位までに入れば決勝に残れる可能性のある戸井田選手も21尺両ダンゴで良型を狙った。計量結果は1位が酒寄選手の13.94キログラム、2位は僅差で天田選手が13.36キログラム、3位に10.97キログラムで戸井田選手が入った。酒寄選手は得意の短いハリスに大きめの喰わせエサを用いるチョウチンセットでしっかりとまとめてきた。
Cブロック
釣り方が大きく分かれたのがこのブロックで、1メーターセットが4人、チョウチンセット3人、チョウチン両ダンゴ1名、タナ2.5メートルのペレ宙釣り1名に分散した。その理由はこのブロックは魚の居着きが目まぐるしく変わる点にあった。一番早くペースを掴んだのが佐々木選手で、12尺のロッドでタナ1メートルのセット。かなりペースの落ちる地合いにも14.00キログラムで1位、2位は得意のヒゲセットで11.54キログラムを釣り込んだ水杉選手、3位には1メーターセットで10.85キログラムを釣った宮嶌選手が入った。
さて、誰が上位6名に入るのか? 昨日までの暫定の順位から各選手は計算するが…。
そして公式アナウンスが。
1位天田選手、2位楠選手、3位小笠選手、4位西沢選手、5位濱嶋選手、すこし時間
をおいて6位佐々木選手がアナウンスされた。
佐々木選手は最後の最後の大逆転だった。
決勝戦
決められた6か所の釣り座を上位者から選ぶ。選べる時間は20秒。予選リーグ1位の天田選手は最奥から3席手前に入った。後に天田選手は、「予選リーグでCブロックに入り奥はあまり魚がついていないような印象を受けた」と語った。逆に2位の楠選手は最奥の釣り座に入った。3位の小笠選手は一番手前に、4位の西沢選手は手前から3席目に、5位の濱嶋選手は手前から2席目、ラストの佐々木選手は5席目に、これで準備は整いいよいよスタートを待った。
釣り方は手前の小笠選手から「皆空」10尺での1メーターセット、濱嶋選手は「閃光LⅡ」の9尺で1メーターセット、西沢選手も「閃光LⅡ」の9尺で1メーターセット、天田選手は「嵐月」の10.5尺で1メーターセット、佐々木選手は「神威」の10尺で1メーターセット、楠選手は「皆空」8尺で1メーターセットとロッドの長さに違いはあるが、全員がラストは「1メーターセット」の釣り方となった。
11時40分スタート。休憩時間などもあったが、ファーストヒットは11時46分で佐々木選手が、続いて50分に楠選手がヒットさせた。各選手のウキの動きが安定してきたのは開始後20分が経過してからだった。12時には楠選手が3枚で、そのあとを5名の選手が追う展開。12時30分、開始後50分で佐々木選手が一気にトップの楠選手に迫る。この30分間で佐々木選手は6枚を釣り上げた。
13時。相変わらず楠選手が15枚でトップ、続いて西沢選手と天田選手が11枚、佐々木選手が10枚、小笠選手9枚、濱嶋選手7枚となった。対岸から選手の動きをみると実に落ち着いている。全員がこのようなトーナメントシーンの経験があるため、ウキの動きを見ながら細かなハリスワーク(ハリス交換)などで対応している。さすがだ!
14時。大崩れしない楠選手。自分の一番好きな釣り、そのためこの釣りの引き出しも多い。バラケエサのタッチを替える、ハリの号数をチェックし、ハリス寸法を調整する。全てが合っている。2位には天田選手が22枚で続き、なんとラスト5分では2枚差まで追い上げる。ドラマは起こるのか?
14時8分、残り2分。楠選手がヒット、天田選手もヒットしラスト1分。天田選手がアワセるがバレる。楠選手はアワセるがカラブリ。そして、5・4・3・2・1 終了!
枚数的には楠選手が26枚、天田選手24枚、西沢選手23枚、小笠選手と佐々木選手が16枚、濱嶋選手14枚となった。
しかし、順位はウエイトで決まる。最奥の楠選手から計量が始まり慎重に重量が告げられる。そして…発表。
優勝は楠選手、重量20.81キログラム。プレッシャーのかかる大舞台でこの釣果は見事だ。最も得意の釣りを第1試合から続け、ブレずに焦らず丁寧にまとめた。経験とスキルが楠選手を一番高いところに導いた!!
大会を振りかえって
最深部8メートル強。様々な釣法バリエーション、きっと選手の皆さんは戦略に迷ったことと思う。しかし、その選択肢が多いことがアングラーのスキルもアップさせる。だから今回は長尺のチョウチン釣りなど今までに見たことのないシーンに痺れた。そして、最終的には「勝つ」ための釣り。タナ1メートルのセット、が大会を制した。ロッドの長さを考え、タックルを変え、エサのタッチを合わせていく。実に細かな細かな作業だが、その一瞬に合わせた人だけが栄光を手にした。素晴らしい釣り、そして素晴らしいフィールドだった。