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クロダイ(チヌ)釣り選手権大会
第13回全国(2024年度)大会 大会結果
シマノ ジャパンカップ クロダイ(チヌ)
第13回全国(2024年度)大会 大会詳細
最後の1分まで諦めない驚異の集中力
波多江義孝選手が前人未踏のV2を達成!
1位 波多江 義孝 選手/2位 笹野 三喜男 選手/3位 吉岡 伸 選手/3位 矢吹 壮 選手
日時 | 2025年5月14日(水)、15日(木) |
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場所 | 徳山湾一帯(山口県周南市) |
後援 | 山口県周南市、一般財団法人周南観光コンベンション協会 |
天候 | 晴れ |
去る5月14日(水)、15日(木)、山口県周南市の徳山湾一帯で「第13回(2025年度)シマノ ジャパンカップ クロダイ(チヌ)釣り選手権 全国大会」を開催いたしました。
大小の島々が浮かぶ徳山湾は、クロダイの魚影が非常に濃いエリアです。工場からの温排水によって湾内は周年温暖に保たれ、とりわけ冬期から春にかけての実績は周辺でも指折り。ちょうど乗っ込み中期に差し掛かる時期であり、抱卵した良型と、沖から入ってきた若い個体が混在するタイミングでの大会開催となりました。
出場選手は全国各地で行われた地区大会を勝ち抜いた26名に、2024年の全国大会で上位入賞した4名のシード選手を加えた総勢30名の精鋭たち。今年は昨年度チャンピオンの辻憲志郎選手をはじめ、矢吹壮選手、百合野崇選手、波多江義孝選手と優勝経験者が4名も参戦。ジャパンカップクロダイ史上初のV2選手誕生なるかという意味でも、注目の大会となりました。
今大会は1日目に予選リーグ3試合を行い、上位8名が2日目に行われるトーナメント戦(準々決勝、準決勝、決勝戦)に進出します。
大会前日の前夜祭では、予選リーグの組み合わせ抽選が行われました。予選リーグは前半1時間、後半1時間、計2時間のマンツーマン対戦。勝った選手には勝ポイント(勝ち:3点、引き分け:1点、負け:0点)が与えられ、合計勝ポイントと合計重量差で予選順位が決まります。勝敗は5尾の総重量で決定。6尾以上クロダイが釣れた場合は、試合終了後3分以内に釣果を入れ替えて5尾のみを検量に持ち込みます。
なお、本大会ではSDGsの観点から魚への負担を軽減することを目的として、釣果はフィッシュバッカンで活かしておき、検量後にリリースすることを義務づけています。
予選リーグ 第一試合
タックルとエサのチェックを行った後、選手は対戦組ごとに「せと志お」「栄勇丸」「渡」の3船に分かれて湾内の磯を目指します。選手たちは審判とともに渡礁し、準備が完了した組から審判の合図で競技開始。朝日が差し込む湾内の方々でホイッスルが鳴り響きました。
好調の徳山湾にあって、検量には続々とクロダイが持ち込まれました。釣果にムラのある乗っ込みシーズンにもかかわらず、スコアレスドローは一試合もなし。両者4kg台というハイスコアでの競り合いも見られ、初戦から好ゲームが続出しました。
第一試合では辻選手、矢吹選手、波多江選手ら15名の選手が勝ち点3を獲得。好スタートを切りました。
予選リーグ 第二試合
続く第二試合でも依然としてクロダイの活性は高く、軽量には30名中25名の選手が釣果を持ち込みました。
この時点において2勝で勝ち点6を獲得したのが、辻選手、波多江選手、吉岡伸選手、伊佐川晃史選手、力石將弘選手、溝邉幸司選手、米本和幸選手、山田雄士選手。この8名が頭ひとつ抜ける展開となりましたが、重量差が小さい試合が多いだけに、どの選手もまだまだセーフティーリードとはいえません。第三試合の結果によっては、大きく順位が動く可能性があります。
予選リーグ 第三試合
そして迎えた第三試合。ここでやや釣果に変化がありました。午後に入ると、潮が下げに入りました。徳山湾は下げ潮になると川の水が入り込み、やや水温が下がり気味になるうえ、表層の潮だけが走る、いわゆる二枚潮がきつくなる傾向があります。クロダイの活性が明らかに落ちる場所も見受けられるなかで、うまく釣り方をシフトした選手は釣果を伸ばせたようです。
初日を終え、全勝(9ポイント)で予選リーグを突破したのは力石將弘選手(1位)と吉岡伸選手(2位)。続いては2勝1敗(6ポイント)の選手が11名という大混戦でしたが、合計重量差によって3位・米本和幸選手、4位・山田雄士選手、5位・矢吹壮選手、6位・波多江義孝選手、7位・辻憲志郎選手、8位・笹野三喜男選手という結果になりました。
準々決勝
一夜明けて2日目、全国の頂点を決するトーナメントが始まりました。対戦の組み合わせは予選での順位で決定します。1組は力石選手と笹野選手、2組は吉岡選手と辻選手、3組は米本選手と波多江選手、4組は山田選手と矢吹選手の対戦です。
「洲島2番」で行われた力石選手と笹野選手の対戦は、お互いに一歩も譲らない激闘でした。結果は力石選手が4,338gに対して笹野選手が4,340g。なんとわずか2g差で笹野選手が劇的な勝利を収めました。
「岩島南」で行われた吉岡選手と辻選手の対戦は、これまで全勝で勝ち上がってきた吉岡選手がベテランの貫禄で辻選手を撃破。ここで辻選手、連覇の夢は断たれました。
「岩島東」での米本選手と波多江選手の対戦は、数少ないアタリを拾った波多江選手が勝利。V2へ向けて勢いを付けます。
「洲島の広場の横」での山田選手と矢吹選手の対戦は、前半に沖の好潮を味方につけて遠投釣法で先行した矢吹選手を山田選手が追う展開。釣り座を交代した後半に猛チャージをかける山田選手でしたが、3,894g対3,581gとあと一歩届かず。前半でうまく良型を絡めた矢吹選手が重量差で勝利しました。
ベスト4に名乗りを上げたのは笹野選手、吉岡選手、波多江選手、矢吹選手。検量まで勝負の行方がわからない接戦が目立った準々決勝でした。
準決勝
続く準決勝のカードは、矢吹選手vs笹野選手、吉岡選手vs波多江選手。
矢吹選手と笹野選手の対戦は「洲島の大ワレ」で行われました。前半戦は沖に向かって左側に笹野選手、右側に矢吹選手が釣り座を構えましたが、タックルを準備している間に左へ流れる潮がどんどん速くなり、試合が始まる頃には完全な片潮になってしまいました。矢吹選手の仕掛けは瞬く間に境界線まで流れてしまい、ほとんど釣りになりません。
矢吹選手の強さは笹野選手もよく知るところ。この潮のまま釣り座を交代すれば、あっという間に追い上げられてしまうのは明らかです。笹野選手は潮が有利なうちに釣果を重ねていきます。前半戦を終えて笹野選手が6尾、矢吹選手が0尾。この時点では完全なワンサイドゲームですが、潮を考えれば致し方ありません。
釣り座を交代して後半戦開始。予想通り、ここから矢吹選手の巻き返しが始まりました。ジリジリと差を詰める矢吹選手でしたが、ここで笹野選手が1号のヘビー級仕掛けにチェンジ。これを潮上へ遠投し、素早くタナを取って境界線までの短い距離で喰わせる作戦に切り替えました。これに喰ってきたのが1.5kgはあろうかという良型でした。
矢吹選手も試合終了までにきっちり5尾のクロダイを揃えたものの、5,494g対3,440gで笹野選手の勝利。潮に泣かされた矢吹選手でしたが、思い切った仕掛け変更で片潮を攻略した笹野選手の引き出しの多さが光った一戦でした。
吉岡選手と波多江選手の対戦は「洲島の広場」で行われました。釣り座は優先権のある吉岡選手が海に向かって右側を選択。波多江選手は左側に釣り座を構えて試合が始まりました。
先にクロダイを喰わせたのは吉岡選手。間を置かずに1尾追釣し、優位に試合を進めます。しかし前半戦の途中から風が吹き始め、大量の浮遊物が海面を覆ってしまいました。この浮遊物に苦戦しつつ前半戦終了。吉岡選手が2尾リードのまま後半戦に突入します。
10分のインターバルの間に浮遊物は減りました。しかし波多江選手はアタリはあるもののクロダイを喰わせきれず、今ひとつリズムに乗れません。一方の吉岡選手は順調で、2尾続けてクロダイを釣り上げて波多江選手との差を広げます。この時点で吉岡選手が4尾。対する波多江選手が0尾。
ここで波多江選手が作戦を変更。それまでの沈め釣りからウキを浮かせる釣りにスイッチし、待望の1尾目をキャッチ。パターンを掴んだ波多江選手は、その後も立て続けに2尾を追加。リードされていても独走は許しません。
ラスト15分を切ったところで波多江選手が4尾目を釣り上げ、いよいよ尾数で吉岡選手に並びます。これで勝負がわからなくなりました。
そして残り10分。潮が止まって波多江選手のアタリが遠のいたところで、吉岡選手がリミットメイクとなる5尾目を釣り上げて再びリード。勝負あったか……。誰もがこう感じてしまうほど重みのある1尾でした。
その後、2選手ともアタリがないまま残り1分のコール。ここで奇跡が起こります。
このまま吉岡選手が逃げ切るかとの空気が流れた矢先、波多江選手のウキが消し込まれました。波多江選手は落ち着いたやり取りでクロダイを取り込みます。この土壇場で追いついてしまうのか。これがV2への執念なのか。ギャラリーから感嘆の溜息が漏れます。ストップウォッチの針は残り15秒を指していました。
検量の結果、吉岡選手の3,937gに対して波多江選手は4,160g。ラスト1分で劇的な逆転勝利を収めた波多江選手が、決勝戦への切符を手にしました。
決勝戦
決勝戦の舞台となったのは、好調が続く徳山湾でもとりわけ実績の高い「水場2番」。まずは波多江選手が沖に向かって左側に、笹野選手が右側に釣り座を構えました。
試合開始のホーンが鳴り響き、いよいよ決勝戦がスタート。先手を取ったのは笹野選手でした。試合開始から間もなく1kg前後の良型をキャッチ。ややあって波多江選手も同クラスを釣り上げて追撃を開始します。潮は左から右沖へきれいに抜けており、クロダイの活性もまずまず。この時点ではハイスコアでの接戦が予想されました。
しかしここで笹野選手にトラブルが発生。確実にアタリを拾っていく笹野選手ですが、クロダイの型が大きいのか、立て続けに高切れに見舞われてしまいます。一方の波多江選手もハリ外れでのバラシが頻発。両選手ともリズムに乗りきれない時間がしばらく続きました。
ここで落ち着いていたのが波多江選手でした。しっかりハリ掛かりしないことから、クロダイが浅いタナまで浮いていると判断。それまで使っていた3Bの棒ウキから00号のカン付き玉ウキへ変更。ゼロスルスルで表層からゆっくりタナを探るアプローチへと切り替えました。
これがピタリとはまりました。そこからは怒濤の連釣モードに突入です。5尾の規定尾数に達したところで前半戦が終了。笹野選手は釣果1尾で試合を折り返します。
釣り座を交代して後半戦が始まりました。笹野選手は本来のペースを取り戻し、着実に釣果を重ねていきます。序盤にあれだけのトラブルに見舞われながらも、簡単には崩れない安定感はさすがです。試合終了間際には規定尾数に迫る4尾のクロダイを釣り上げ、波多江選手を追います。
しかし、完全に喰わせのパターンを掴んだ波多江選手のペースは最後まで衰えませんでした。最終的には11尾のクロダイを釣り上げ、盤石の態勢で試合終了を迎えました。
序盤にペースを乱されながらも、最後まで見応えのある勝負を見せてくれた波多江選手と笹野選手。ギャラリーからは惜しみない拍手が贈られました。
検量の結果、波多江選手が4,917g、笹野選手が3,251gで波多江選手の勝利。最後の1分まで諦めない驚異的な集中力で決勝まで勝ち進んだ波多江義孝選手が、ジャパンカップクロダイでは初となる通算2勝という偉業を成し遂げました。