へら釣り選手権大会

全国大会 大会結果

シマノ ジャパンカップ へら 全国大会 大会詳細


 

1位 吉田 康雄 選手/2位 斉藤 心也 選手/3位 柴崎 誠 選手

日時 2022年10月15日(土)、16日(日)
場所 友部湯崎湖(茨城県)
主催 株式会社シマノ

第1試合

誰もが緊張する第1試合。この試合の意味合いは深い。ブロック何位で試合を終え、何ポイント得られるのか…。まずは全選手のファーストアタックをチェック。
その結果は…


・カッツケセット(水面直下の浅いタナを狙う釣り方)16名
・浅ダナセット(70センチ前後のタナを狙う釣り方) 3名
・チョウチンセット(竿いっぱいの位置にウキがある釣り方)5名
・チョウチン両ダンゴ(上記の釣り方でエサが両ダンゴ)1名


やはり前評判通りに「カッツケ釣り」をセレクトした選手が64%を占めた。この釣り方のメリットは手返しが早く「数釣り」が可能になる。しかし、タナ・仕掛け・エサなど全てのセッティングが合わなければ釣り込むことも難しい。
注目の選手は?
まず前回大会チャンピオンの石倉選手はカッツケセット、2位の斉藤選手もカッツケセット、3位の天笠選手は浅ダナセットをセレクト。予想通りのセレクトだった。

 

Aブロック

このブロックには前回大会シード1位の石倉選手、3位の斉藤選手、優勝経験のある吉田選手に注目選手の今野選手と強豪が揃った。
Aブロック一番手前の釣り座を引き当てた吉田選手がスタートから30分で釣り方をカッツケからチョウチンに替え、見事に1位通過。石倉選手は3位、今野選手は4位、そして斉藤選手はまさかの6位となった。しかし、斉藤選手はこのカッツケセットが合わなかったことで、「反対に釣り方に迷うことなく、この後の試合はチョウチンセットで通すことができた…」と語った。

Bブロック
シード2位の天笠選手、清遊湖地区大会1位の内島選手、このブロックのメンバーも濃い。また、8人中6人がカッツケ釣りを選択した。試合開始から1時間、徐々にややタナを取った天笠選手がハイペースとなり、それを追う形でカッツケの佐藤選手、チョウチン釣りのエキスパート木村選手が続いた。
カッツケ釣りとチョウチン釣り、数は圧倒的にカッツケ釣りとなるが、重量はやはりチョウチン釣りが勝る。1フラシ15枚とした今大会で平均約1キログラム、チョウチン釣りの方が目方を稼いだ。

 

Cブロック
このブロックにシード選手はいないが、武蔵の池・椎の木湖・甲南へらの池地区大会各1位の桜井選手、岡田選手、岩本選手が揃った。このブロックのみが岸からの釣りになるため、各選手の釣り方もバラバラになり、一番の注目となった。
結果は得意のチョウチンセットで釣りきった桜井選手が1位通過、2位にはカッツケ釣りの中でも極めて浅いタナを釣り「ハリスカッツケ」を極めた柴崎選手が、3位にはこれまた驚きのセッティングの大谷選手が入った。この大谷選手はロッドが「紅月」の6尺、超軽量のウキに短ハリスで最終的にはファイナルまで進むことができた。

第2試合

第1試合の各選手の釣り方・釣果・順位は分かっている。そこで、この第2試合をどのように組み立てていくか。第1試合の感触が良かった選手、反対に大きく釣り方をチェンジする選手、様々だった。
その釣り方セレクトは…
 

・カッツケセット(水面直下の浅いタナを狙う釣り方)14名
・浅ダナセット(70センチ前後のタナを狙う釣り方) 2名
・チョウチンセット(竿いっぱいの位置にウキがある釣り方)9名
 

全選手が「セットの釣り」になり、チョウチンセットが36%と増えた。その要因はやはり第1試合の釣果にある。また、水面直下を相当攻められたことで、更に難しい釣りになると判断したと思われた。


Aブロック
9人中カッツケセットが6名、チョウチンセットが3名。第1試合1位の桜井選手、2位の柴崎選手、優勝経験豊富な岡田選手に加えて、浅いタナを得意とする岩泉選手、楠選手とメンツは揃った。
ロケットスタートで早々にフラシ交換したのは楠選手。最高釣果の19.69キログラムを叩きだした。2位にはハリスカッツケの柴崎選手、3位には大谷選手が入った。桜井選手は13.95キログラムと好釣果だが、他選手の釣果がそれを上回り6位となった。25名の全体釣果も327.75キログラムとこの第2試合は僅かなミスが響く試合となった。


Bブロック
第1試合カッツケ釣りでかみ合わなかった斉藤選手はチョウチンセットに、それも誰も試みていない「ヒゲセット」(食わせにトロロコブを使用)。その他の選手はカッツケ釣りが2名で、チョウチンセットの激戦区となった。地区予選から終始チョウチンセットで勝ち上がって来た選手にとってこのブロック上位になれば相当な自信にもなる。
結果は…。ヒゲチョウチンセットに作戦変更した斉藤選手が見事18.95キログラムを釣った。2位には岩本龍貴選手がカッツケ釣りで、3位には島田選手がチョウチンセットで食い込んだ。


Cブロック
岸からの釣りになることから8人中6人がカッツケ釣り、天笠選手はややタナを取った浅ダナ釣り、そんな中Cブロック3番に入った木村選手は迷わずチョウチンセットをセレクト。石倉選手はカッツケ釣りでありながらタナの調整。最奥の澤井選手もダンゴの釣りからセットに切り替えた。
今野選手が好スタートを切り、ジワジワと他の選手が追う展開。チラッと見ただけでもチョウチンタナのへら鮒は良型が混じっている。検量の結果は、ただ一人チョウチン釣りをセレクトした木村選手が1位通過した。お見事だった!

第3試合

いよいよ最終試合。前日までの暫定順位は選手に知らされている。ファイナル選出のボーダーラインは何ポイント?自分はこの第3試合で何ポイント取れば…
様々なことを想定しながら準備に取り掛かる。注目はCブロック。シードの石倉選手、斉藤選手、天笠選手が3名揃い、過去の優勝経験者吉田選手、岡田選手と超濃厚なメンバーが揃った。
釣り方セレクトは…

・カッツケセット(水面直下の浅いタナを狙う釣り方)16名
・浅ダナセット(70センチ前後のタナを狙う釣り方) 1名
・チョウチンセット(竿いっぱいの位置にウキがある釣り方)8名

カッツケ釣りが16名、伊藤の予想では前日の結果からもっとチョウチン釣りが多くなるかと思っていた。試合後に選手に聞くと「午前中、まだ攻められていないので少しだけ素直かと…」自分の釣りスタイルだけではなく、へら鮒に合わせていく。それも「少しだけ…」にかける、これこそがトーナメンターなのだろう。

 

Aブロック
カッツケ釣りが7名、チョウチン釣りが2名。地区予選からチョウチンセットで釣り続けていた上杉選手もカッツケ釣りに。暫定14ポイントの今野選手、大谷選手が注目。また、12ポイントの佐藤選手、岩泉選手も1位通過ならば大逆転もあり得る。
スタート直後はカッツケ釣りの岩泉選手がゲームを引っ張る。が、中盤から山形県から参加の伊藤選手が決まり始めブロック2位。試合後、伊藤選手「最後は自分の一番好きな釣り方で楽しみました…」と最高の笑顔を見せてくれた。最終的には岩泉選手が1位9ポイントでファイナル進出となった。


Bブロック
暫定1位の木村選手、2位の柴崎選手、13ポイントで追う桜井選手が揃う。カッツケ釣りが4名、チョウチン釣りが4名と半々となった。が、気になったことはチョウチンセットの4名が並んでいること。当然へら鮒を分けることにもなり、地合いを作れるか?
そして、その心配は現実となった。暫定1位の木村選手が失速、反対に誰も攻めていないハリスカッツケの柴崎選手は16.48キログラムを釣りブロック1位となった。
チョウチンセットの釣り、かなりシビアになって来たな~、僅かに合わないだけでも釣りが成立しないのだった。


Cブロック
激戦区。他の選手からは「危険ブロック」「息もできない…」と言われるくらいのメンバーが揃った。更にそこに前日の第2試合で何かを掴み19キロ台の釣果を出した楠選手も加わる。ここで下位ならばファイナルにも進めない。さてその釣りセレクトは…
カッツケ釣りが5名、浅ダナが1名、チョウチン釣りが2名、ヒゲセットで安定している斉藤選手、最奥の釣り座で1発逆転を狙う岡田選手。石倉選手、斉藤選手、楠選手はボーダーライン。1ポイントでも上位を目指したい。そして結果は。良型をきっちり揃えた斉藤選手が1位、2位には楠選手が入った。

決勝進出者…

予選3試合が終了。集計に入る、毎回ドキドキする瞬間。
1位は25ポイントを獲得した柴崎選手、カッツケ釣りの中でも最も上層のタナを第1試合から攻め抜いた。2位には最終試合で1位通過し8ポイントを加算した斉藤選手。あまり誘いをかけない静かなチョウチンヒゲセットで完全に湯崎湖のへら鮒をとらえた。3位は吉田選手、カッツケ釣りからチョウチンセットまで万全。特に、後半見せたチョウチンセットの釣りは強さも繊細さも備えている。4位には岩泉選手が入った。ブロック1位で抜けて大逆転。まさに、勢いよく決勝戦も戦えるに違いない。5位は大谷選手、試釣から手ごたえを感じていた6尺チョウチンセットで勝負。「夢の舞台に感動しています…」とのコメント。そして、6位には合計ポイント20が4名いる中で「占有率」で石倉選手が選出された。第1試合からカッツケ釣りで攻め、粘り強く釣果を重ねての決勝進出となった。

決勝戦

始まります。
日本一を決める2時間30分です。
事前チェックでは…
柴崎選手・普天元独歩7尺でカッツケ釣りです。この釣りに賭けます。誰も攻めないエリアを最後まで打ち続けます。多分、昨日よりも状況は良くないと思いますが、釣りは合っているのでイケそうな感じです。
斉藤選手・皆空7尺でチョウチンヒゲセットです。時よりヒゲセットは裏切ることもありますが、今回は大丈夫です。お天気も良くなってきたのでヒゲセット地合いでしょう(笑)試釣から好感触だったので、これで決めます。
吉田選手・皆空8尺か、7尺?チョウチンかカッツケ?まだ迷ってます。もう少し考えてから決めます。どちらにしても最後の最後、ラスト1秒まで気合で釣り続け、最終的に納得する釣りができれば最高です。
岩泉選手・普天元独歩7尺でカッツケです。タナは20cm位から様子を見ます。喰わせエサは「感嘆」を使用します。最後の試合で感じもつかめたので、後は自分を信じて頑張ります。
大谷選手・紅月6尺でのチョウチン釣り、もうこの釣りしか考えていないので。桟橋に6人だけですからね~、できれば自分の両サイドに誰か入ってほしいです。ウキのサイズをワンランク大きくしてみます。
石倉選手・普天元独歩7尺でのカッツケ釣り。なかなか難しい釣りになると思います。とりあえずウキはボディー3.5センチ、喰わせエサはいろいろとありますが、「さなぎ感嘆」でやってみます。頑張ります。

 

11時30分スタート
試合開始とともに好スタートを切ったのが吉田選手。4枚まではパタパタと釣果を延した。それを追って、斉藤選手、石倉選手、柴崎選手と続く。気になったのが「流れ」午後になると季節風の影響からここ湯崎湖は若干の流れが出る。それが今日は早いようにも感じた。この流れを嫌うのが水面直下を狙う柴崎選手。やはりペースに乗れない。

 

12時17分
吉田選手15枚になりフラシ交換。45分での交換は早い。更に、この決勝戦は今までエサが打たれなかった2号桟橋1号向きを使用しているため、ウキが動くまで各選手10分を要していた。

 

12時30分
吉田選手18枚、斉藤選手13枚、柴崎選手・石倉選手13枚と依然、吉田選手がリード。しかし、前日からの傾向でパタパタと釣れた後に穴が開く(釣れなくなる)ことが多い。選手もこの傾向は感じていた。その為、少しでもウキの動きが悪くなると「タナ」「ハリス」「ハリ」を交換していた。シビアな釣りだ。
 

12時53分
吉田選手と石倉選手が22枚で並ぶ。この30分での石倉選手のカッツケ釣りは決まっていた。回転が速い、スレが少ない、だから釣れる。

 

13時00分
少し団子状態になってきた。トップの吉田選手が26枚、斉藤選手24枚、石倉選手・柴崎選手が22枚、上位4名が4枚差。
7分前に石倉選手に並ばれた吉田選手だが、ここで連発して4枚追加。反対に石倉選手が延びない。このパターンが今回の湯崎湖にはあった。

 

13時30分
伊藤から向かって左から…
石倉選手29枚、大谷選手23枚、岩泉選手27枚、吉田選手35枚、斉藤選手33枚、柴崎選手28枚。まだまだ勝負の行方は分からないが、ウキの動きや今までの地合いから吉田選手と斉藤選手に絞られてきた感じがある。

 

そして、13時52分、二人が並んだ。
39枚対39枚。同じチョウチンセットだが、喰わせエサが違う。固形物のウドン対トロロコブ。対岸から見る限りではほとんど変わらない。とすると枚数勝負にもなる。

 

残り8分。
吉田選手が釣れば斉藤選手も、残り3分でハリスカッツケ釣りの柴崎選手も追い上げてきた。この釣りが決まれば釣り込む時間は早い。

 

残り1分30秒。
もうここからは時報を聞きながら勝負の行方を追うが、吉田選手が強い。焦らずゆっくりタテ誘いをかけての「ズバッ」「カチッ」最後の最後に勝負強さ、ジャパンカップの勝ち方を知っていた吉田選手に勝負の女神は微笑んだ。


第37回シマノジャパンカップへら釣り選手権大会は終生、語り継がれるような素晴らしい決勝戦で幕を閉じました。