へら釣り選手権大会

第38回(2023年度)全国大会 大会結果

シマノ ジャパンカップ へら 第38回(2023年度)全国大会 大会詳細

黒田選手2度目の栄冠!!
ラスト1分のドラマ

 


 

1位 黒田 友康 選手/2位 吉田 康雄 選手/3位 時田 光章 選手

日時 2023年10月14日(土)、10月15日(日)
場所 湯崎湖(茨城県)
天候 1日目晴れ、2日目雨

伊藤さとしの見方
 

湯崎湖の釣況に変化が…。昨年のように「カッツケ」でへら鮒が湧くような寄りを見せない点、そして、決定的なところでは8月下旬頃からは圧倒的に「底釣り」が良くなった事に尽きる。月例会での釣果も「底釣りで150枚」「釣果60キロ…」これは驚異的な数字だった。だが、多くの選手はこの状況は一時的なもので全国大会時には「終わるだろ~」と推測していた。しかし、9月になっても10月上旬も好調は続き、選手間に「底釣り、あるかも?」の声も聞かれるようになっていた。
 さあ、どっちだ!
 また、選手の顔ぶれにも変化が見られた。当然激戦の地区予選を勝ち抜かなければこの場に来ることはできない。しかし、今回シード選手を除いた23名中13名、半数以上が「初参加」という展開となった。当然、緊張と興奮の中での戦いになったことと思う。最終的には最後の6名には選出されなかったが、輝かしい姿を見ることができた。
 来年、また会おう!

第1試合

 全員緊張の第1試合。すでに抽選で今日と明日の釣り座は決まっている。そして、今回はエントリーが26名のため、13名を1ブロックとした。この13人横並びは今まで行ったことがない。最下位ならば1ポイント、しかし頭を取れば13ポイントと夢も広がる。


Aブロック
 注目選手は、前年度シード1位の吉田 康雄選手、2位の斉藤 心也選手。更に清遊湖予選1位の石倉 義久選手、椎の木湖予選1位の山崎 学選手、と最強トーナメンターが揃った。
 スタート時の釣り方セレクトは、6尺チョウチンセット2名、7尺チョウチンセット5、7尺浅ダナセット2名、7尺底釣り2名、8尺チョウチンセット1名、15尺底釣り1名となった。
 明らかに「底が意識されている」
 スタート直後は浅ダナ・チョウチン・底釣りとウキは動き大差なかったが、徐々にタナ50センチ前後を狙う釣りがペースを上げ、1位は石倉選手、2位に濱田 琢也選手。3位には6尺という超短竿を使用し、チョウチンセットで攻めた山崎選手が入った。

 

Bブロック
 このブロックも武蔵の池予選1位の金子 朔也選手、甲南へらの池予選1位の瀬戸 晴晶選手、前年度シードの柴﨑 誠選手に加え、トーナメント常連の時田 光章選手、過去優勝経験の黒田 友康選手とメンツは揃った。
 スタート時の釣り方セレクトは、7尺チョウチンセット2名、7尺浅ダナセット2名、8尺チョウチンセット2名、8尺浅ダナセット3名、13.5尺1名、14尺底釣り3名と大きく分かれた。
 開始直後から圧倒的に底釣りが好調で、3時間釣果で1位の柴崎選手が17.89キログラム、2位の時田選手が17.49キログラムとハイスコアーを叩き出し。3位には黒田選手が8尺チョウチンセットで15.20キログラムを釣った。
 Bブロックとなる2号桟橋は様々な釣り方で「釣れる」ことが明確になった。

第2試合

 12時からの第2試合。晴天で気温も水温も上昇し、魚の活性も高くなる。この変化にどのように作戦を変更するのか?このあたりも見どころとなった。
 第1試合の情報も飛び交い、恐らく今までとは違った攻め方をする選手も多くなる。自分の好きな釣りをするか?状況にマッチングさせるか?
 最も迷う展開となる…


Aブロック
 スタート時セレクトは、6尺浅ダナ1名、7尺チョウチンセット3名、7尺浅ダナセット3名、8尺浅ダナセット1名、9尺浅ダナセット2名、13.5尺底釣り1名、14尺底釣り2名と7パターンに分かれた。
 これも珍しい展開だ。
 やはり魚の活性は一気に上がり、スタート直後からヒットが連続。底釣りセレクトの時田選手が13.86キログラムでトップ釣果、2位にはチョウチンセットの黒田選手が13.56キログラム、3位には7尺チョウチンセットの金子選手が12.79キログラムを釣った。
 全般的には底釣りとチョウチン釣りが上位を占める中、ここでは岩泉 和斗選手が7尺浅ダナセットで賢い上層の魚をせめて12.59キログラムの釣果を得た。

 

Bブロック
 第1試合では底釣りが絶好調。しかし、魚の状況は変わりつつあった。
 スタート時セレクトは7尺チョウチンセット5名、7尺浅ダナセット3名、8尺チョウチンセット4名、そして14尺底釣りは1名となった。
 なぜ?
 数名の選手に試合後聞いてみると「魚は浮き始めている」と判断したらしい。結果的にも14尺底釣りは4.21キロと振るわなかった。刻々と変化する地合いを読む判断力もここでは求められていく。最終的には吉田選手が15.03キログラムでトップ、2位は福田 直忠選手が13.72キログラム、釣り方は8尺チョウチンセット、3位には綿引 勝美選手が7尺チョウチンセットで13.40キログラムを釣った。

第3試合

 泣いても笑っても最終の予選試合。前日までの暫定順位は全選手に伝わっている。最終的には上位6名のみが決勝戦に駒を進める。それだけにこの第3試合には深い意味がある、攻めるか?守るか?
 天候も昨日とは大違い。早朝から肌寒く降雨、水温低下が予想される。底はどうなのか?この後東風は吹くのか?それに伴う水流は?様々な気象状況も意識しながら選手は準備に取り掛かった。

 

Aブロック
 暫定6位までに入っている選手が4名。ここで確実にポイントを上乗せすれば間違いなく決勝進出となる。
 スタート時セレクトは、7尺チョウチンセット2名、7尺浅ダナセット5名、8尺チョウチンセット1名、8尺浅ダナセット1名、9尺浅ダナセット1名、10.5尺浅ダナセット1名、14尺底釣り2名と大きく分かれた。注目の黒田選手はお決まりのチョウチンセット、吉田選手は変化をつけ10.5尺浅ダナセットとした。
 注目の結果は金子選手が10.99キログラムでトップ、8尺チョウチンセットで決めた。2位には斉藤選手が底釣りで10.37キログラム、3位には黒田選手が10.03キログラムで確実にポイントを加えた。おそらく予選トップ通過だろう。

 

Bブロック
 暫定1位の時田選手、5位の石倉選手、そこにボーダーライン上の選手がぎっしり入ったBブロック。ここで1位を取り13ポイントを加算すれば一気に上位に食い込む選手。
釣り方に迷う…。
スタート時セレクトは、6尺チョウチンセット1名、7尺チョウチンセット1名、7尺浅ダナセット3名、8尺チョウチンセット3名、8尺浅ダナセット3名、14尺底釣り2名。
スタート直後から戸井田 祐一選手の底釣りが良い。コンスタントに竿が曲がる。続いて柴崎選手の底釣りも同様に釣れている。前日は後半になって失速した「底釣り」しかし、この日の後半戦は完全に地底に着いている。
結局この二人がワンツーを決めて、なんと暫定11位と14位から大逆転の決勝進出となった。恐るべし「底釣り」

決勝戦

 進出者は終始チョウチンセットで釣り抜いた黒田選手が1位通過、2位には吉田選手が、3位に石倉選手、4位に時田選手、5位に大逆転の柴崎選手。6位は暫定14位、16ポイントから第3試合でトップ通過し合計29ポイントで滑り込んだ戸井田選手が入った。

さあ、これからの2時間半、どのような作戦でトップを狙うのか?


1位から好きな釣り座を選べる。黒田選手は迷わず最奥を、2位の吉田選手は同じ釣りがかぶるのを嫌ったのか一席空けて入った。3位の石倉選手はその間に、4位の時田選手は中央に、5位の柴崎選手は一番手前に、最後の戸井田選手は残りの席に入った。


 釣り方は?
 ほぼ予想は通りだった。黒田選手、石倉選手は迷うことなく今回やり続けてきた釣り。時田選手はやはり感触の良かった底釣り、戸井田選手・柴崎選手も第3試合で大逆転した底釣り、ここまでは容易だったが、吉田選手は…?
昨日の第2試合のウキの動きを見ていた感じでは王道の8尺チョウチンセット?
やはり「皆空」が竿掛けに置かれた。
これでスタートとなる。ファーストヒットは石倉選手の浅ダナセット、これに続いて全選手が合わせ始めるが吉田選手だけ15分間の沈黙が続く。しかし、1枚ヒットしてからは吉田選手のペースが安定する。それを追う黒田選手と時田選手。あれだけ好地合いだった「底釣り」がペースアップしない。底付近には居るのだが下を向いて捕食しない状況が続く。だから竿は曲がるがスレのパターンが続く。タナの微調整を常に行う底釣り。反対に寄りがキープされ早いアタリで食ってくるチョウチンセット。
完全にこの吉田選手・黒田選手の一騎打ちになってきた。追いつけそうで追いつけない黒田選手。ここぞというときに良型を釣る吉田選手。2時間30分の残り時間はもう僅か。


13時42分、残り18分で黒田選手が再度同枚数に並ぶ。次の瞬間吉田選手の竿が曲がり、再逆転。その2分後に再度黒田選手が並び、残り1分、32枚目を黒田選手が釣り、ラスト10秒前で更に勝利を決定づける33枚目を玉網に滑らせゲームセット。
ラスト1分にドラマがあり、ギャラリーも息を飲む大接戦となった。


自分の釣りを信じ、2度目の栄冠、黒田選手おめでとう!!!


そして素晴らしい釣りだった…