黒鯛(チヌ)釣り選手権大会

第14回全国(2025年度)大会 大会結果

シマノ ジャパンカップ 黒鯛(チヌ)
第14回全国(2025年度)大会 大会詳細

26歳の新星が見せた怒濤の入れ喰い劇
原田晃成選手が初出場&初優勝!

 


 

1位 原田 晃成 選手/2位 下西ノ園 大地 選手/3位 溝邉 幸司 選手/3位 掛谷 崇将 選手

日時 2026年5月15日(金)、16日(土)
場所 徳山湾一帯(山口県周南市)
主催 株式会社シマノ
後援 山口県周南市、一般財団法人周南観光コンベンション協会
天候 晴れ

去る5月15日(金)、16日(土)、山口県周南市の徳山湾一帯で「第14回(2026年度)シマノ ジャパンカップ 黒鯛(チヌ)釣り選手権 全国大会」を開催いたしました。


出場選手は全国各地で行われた地区大会とセミファイナルを勝ち抜いた14名に、2025年の全国大会で上位入賞した4名のシード選手を加えた総勢18名。20代から60代まで幅広い年齢の選手が揃い、また過去の優勝経験者が3人もいることもあって、実に豊かな顔ぶれとなりました。
今大会は1日目に予選リーグ3試合を行い、上位8名が2日目に行われるトーナメント戦(準々決勝、準決勝、決勝戦)に進出します。
 
予選リーグは2時間のマンツーマン対戦で、5尾の総重量で勝敗を決定。勝った選手には勝ポイント(勝ち:3点、引き分け:1点、負け:0点)が与えられ、合計勝ポイントと合計重量差で予選順位を決定します。
勝敗は5尾の総重量で決定。6尾以上クロダイが釣れた場合は、試合終了後3分以内に釣果を入れ替えて5尾のみを検量に持ち込みます。
なお、本大会ではSDGsの観点から魚への負担を軽減することを目的として、釣果はフィッシュバッカンで活かしておき、検量後にリリースすることを義務づけています。


昨年より会場となった徳山湾は、黒鯛の魚影が濃い瀬戸内海でも、とりわけ実績が高いエリアとして知られる所です。工場からの温排水が流れ込む関係で、湾内は冬場でも水温が高く保たれており、特に寒の時期から乗っ込み期にかけての実績は周辺でも指折りです。
今年は黒鯛の釣れ始めが早く、大会当日の徳山湾は、ちょうど乗っ込みの後期に差し掛かったところ。すでに産卵を終えた個体と抱卵した個体が混在しており、釣れる型にもバラツキがある状況でした。また場所によってはグレが多く、グレをかわして黒鯛のタナへエサを届けるテクニックも問われる大会となりました。

予選リーグ 第一試合

未明の港に集合した選手たちは、スタッフによるタックルとエサのチェックを行ったのちに「せと志お」「栄勇丸」の2船に分かれて湾内の磯へ渡ります。天候は無風の快晴。絶好の大会日和です。まだ5月にもかかわらず日中は30℃近くまで上がるとの予報で、暑い一日になりそうです。
準備が完了した組から審判の合図で競技開始。2日間にわたる戦いの火蓋が切って落とされました。

 

前日に降ったゲリラ豪雨の影響か、朝一番はやや水潮気味というコンディション。特に湾奥ほど黒鯛の喰いが渋く、第一試合は磯によって釣果にバラツキの出る展開となりました。
4,948gの釣果を叩き出して好スタートを切ったのは、2018年の覇者である矢吹壮選手。V3を狙う波多江義孝選手も、僅差の戦いを制して白星スタートを決めました。

予選リーグ 第二試合

この時間帯は豪雨によって冷たい真水が流れ込んだせいか黒鯛の浮きが悪く、喰ってくるタナがやや深い様子です。かといって深く仕掛けを入れすぎると真鯛やコブダイといった他魚が喰ってくるので、いかにして狭い黒鯛のタナに付けエサを届けるかが勝負の分かれ目となったようです。
こんなシビアな状況下で、7,988gというハイスコアで暫定2位に躍り出たのが溝邉幸司選手。過去の表彰台選手である波多江選手、下西ノ園大地選手も連勝で順位を上げてきました。

 

予選リーグ 第三試合

午後に入ると下げ潮に変わりました。水潮が広範囲に広がることから、厳しい戦いになることが予想されました。検量では2,000g以上の差が付いた試合があれば、200g差で競り合った試合もあり、バラツキのある各磯の状況に、うまく攻め方をシフトできた選手が勝利を引き寄せたように見受けられました。

 

それでも黒鯛の魚影が濃い徳山湾です。エリアによって数に差はあるものの全体的に黒鯛はよく釣れており、スコアレスドローの試合はゼロ。5尾対5尾の重量勝負も見られ、初日から見応えのある試合が目立ちました。
予選リーグの3試合を終え、全勝(9ポイント)で予選リーグを突破したのは溝邉幸司選手(1位)、波多江義孝選手(2位)、下西ノ園大地選手(3位)の3名、以下、2勝1敗で6ポイントを獲得した原田晃成選手(4位)、矢吹壮選手(5位)、竹田純平選手(6位)、掛谷崇将選手(7位)、吉岡伸選手(8位)が準々決勝進出を決めました。

準々決勝

明けて大会2日目。ここからは一戦勝負のトーナメント戦となります。対戦の組み合わせは予選での順位で決定。1組は溝邉選手と吉岡選手、2組は原田選手と矢吹選手、3組は下西ノ園選手と竹田選手、4組は波多江選手と掛谷選手の対戦です。

 

「洲島広場(横)」で行われた溝邉選手と吉岡選手の対戦は、がっぷり4つの好試合でした。昨年3位の吉岡選手がリードする展開も、後半で溝邉選手が追いついて両選手とも5尾のリミットをマーク。検量の結果、56gの僅差で溝邉選手が勝利しました。

 

「岩島東」での原田選手と矢吹選手の対戦は、瀬戸内特有の速い潮を釣るテクニカルな試合となりました。熾烈な釣り合いを制したのは原田選手。26歳の若き精鋭が大金星を上げました。

 

「爪」で行われた下西ノ園選手と竹田選手の対戦は、後半の途中まで両選手とも釣果なしというシビアな展開。その中でも試合終了10分前に下西ノ園選手が貴重な黒鯛をキャッチ。ワンチャンスをモノにした下西ノ園選手が準決勝へ駒を進めました。

 

「竜宮バナ」で行われたのは波多江選手と掛谷選手の対戦。2選手は予選リーグでも対戦しており、このときは波多江選手が勝利しています。掛谷選手は得意の棒ウキ仕掛けで丁寧にタナを探り、試合巧者の波多江選手を撃破。見事に雪辱を果たしました。波多江選手の連覇、そして通算3勝への夢は、ここで断たれることになりました。

 

熾烈なベスト4争いを制したのは溝邉選手、原田選手、下西ノ園選手、掛谷選手。この時点でこの4選手は、表彰台が確定するとともに来年度大会のシード権を獲得しました。

準決勝

続く準決勝は、溝邉選手と原田選手、下西ノ園選手と掛谷選手の対決です。

 

「水場2番」で行われたのは、圧倒的な釣果を叩き出し、これまで無傷で勝ち上がってきた溝邉選手と、正確にコマセと仕掛けを合わせる遠投釣法で優勝経験者を次々に倒した原田選手の対戦。海に向かって左に溝邉選手、右に原田選手が釣り座を取って試合が始まりました。潮はゆったりと左へ流れており、原田選手が潮上、溝邉選手が潮下を攻めることになります。

 

先手を取ったのは原田選手でした。エサ取りの動きを見ながら徐々にポイントを沖へ移し、適切な距離感をつかむやいなや黒鯛を連発。試合開始から30分足らずで6尾の黒鯛を仕留め、有利に試合を進めます。
一方の溝邉選手も2尾の黒鯛を釣り上げ、原田選手を追います。しかし、次第に沖を流れる潮が緩くなり、両選手ともアタリが遠のいてしまいました。
釣り座を入れ替えて後半戦が始まりました。沖の潮がゆっくりと逆方向へ動き始めましたが、状況は変わらず。溝邉選手としては早く規定尾数を揃えたいところですが、1尾黒鯛を仕留めるものの、その後が続きません。
原田選手はペースこそ落ちたものの、ポツリ、またポツリで黒鯛を釣り上げていきます。

 

そして試合終了。検量の結果、5,395g対2,478gで原田選手が溝邉選手を下し、決勝へ勝ち名乗りを上げました。

 

「岩島南」では、表彰台の常連であり初の優勝に挑む下西ノ園選手と、昨年の覇者を倒して勝ち上がってきた掛谷選手の試合が行われました。海に向かって左に掛谷選手、右に下西ノ園選手が釣り座を取って試合が始まりました。

 

好スタートを切ったのは下西ノ園選手。序盤からコンスタントに黒鯛を釣り上げ、着実にリードを広げていきます。途中、大量の切れ藻が流れてきて釣りの邪魔をしますが、竿を立て気味にして手前の藻をかわし、狙いのポイントへ仕掛けを送り込んで黒鯛を追加。前半でリミットの5尾を揃え、万全の体勢で前半を終えました。

一方の掛谷選手は苦戦。前半1尾で試合を折り返します。
釣り座をチェンジして後半がスタート。ここにきて不明瞭だった潮が動き始めました。これで黒鯛の活性が高まるかと思われましたが、期待に反して海は沈黙したまま。両選手とも釣果が伸びず、3,678g対1,088gで、終始試合を有利に進めた下西ノ園選手が、初の優勝へ王手をかけました。

決勝戦

そして迎えた運命の決勝戦。26歳の原田選手が勝てばジャパンカップ黒鯛(チヌ)最年少での優勝、下西ノ園選手が勝てば悲願の初優勝。両選手とも、この日のために努力を重ねてきました。ジャパンカップへの思いは人並みならぬものがあります。
決戦の舞台は、乗っ込み期の実績場である「洲島広場」です。釣り座選択の優先権がある下西ノ園選手が沖に向かって左側、原田選手が右側に釣り座を取ります。そして13時10分、試合開始のホーンが鳴り響きました。潮は左から右、いわゆる下げの潮がゆったりと流れています。

 

先に竿を曲げたのは原田選手でした。試合開始から6分後、エサ取りの活性を見ながら少しずつポイントを沖へ離していったところ、一気に道糸が走りました。取り込んだのは40cmクラスの良型。
「ジャパンカップに参戦するにあたり、ポイントまでの“距離感”と、刻々と変化するチヌが喰ってくる“タナ”の2点を常に意識していました。手返しを考えると基本的にポイントは近くに設定するのが有利ですが、エサ取りが多いと理想どおりにはいきません。今期の徳山湾はグレとウマヅラハギが多いことはわかっていました。グレが喰ってくるならポイントを沖へ離し、ウマヅラハギが喰ってくるときは手前へ近づけて、チヌのタナに付けエサが通るエリアを探るのですが、この距離感が決勝戦でもピタリとハマったように思います(原田)」
ここからは怒濤の入れ喰いでした。パターンをつかんでからは、最短で3分という間隔で黒鯛を連発。試合開始から40分で5尾のリミットメイクを達成。前半だけで7尾の黒鯛を仕留めてしまいました。
これにはギャラリーも言葉を失いました。予選リーグを突破したところまでは「若さゆえの勢い」と評する向きもありましたが、目の前でこれだけの釣りを見せつけられたとなれば、「これはタダ者ではないぞ」という空気が漂ってくるのも当然でしょう。
正確無比なコマセワーク、緻密なラインテンションのコントロール、何よりも短いスパンで遠投を繰り返すフィジカルの強さ。非の打ち所がないとは、まさにこのことでしょう。

 

一方、潮上を攻めていた下西ノ園選手は、徐々に速くなった下げの潮に苦戦していました。
「あえて潮上を選んだのには理由がありました。磯の右沖にはシモリらしいシモリがないのですが、左側の足下には3つほどシモリがあるんです。ここにコマセを溜めてチヌを呼び込むことができれば、効率よく喰わせることができると考えたんですよ。ただここまで潮が速くなると、仕掛けがなじむ頃にはエリアの境界線を越えてしまいます。前半戦は我慢の時間になってしまいましたね(下西ノ園)」
こんな状況下でも下西ノ園選手は良型を1尾キャッチ。ハリスを張り替えて後半戦にすべてを賭けます。
原田選手が7尾、下西ノ園選手が1尾の黒鯛を釣り上げたところで前半が終了。釣り座を交代します。

 

ここから本領を発揮したのが下西ノ園選手でした。僅差の勝負に何度も競り勝ってきました。まったく釣れない状況下でも、貴重な1尾を喰わせて勝利したこともあります。自身でも「落ち着いて試合に臨むことができました」と語っていたとおり、下西ノ園選手が慌てることなく自分の釣りに集中していたことは、傍目にもよくわかりました。
満ちの潮に変わり、潮が逆方向へ流れ始めても問題なし。1尾、そしてまた1尾と着実に釣果を重ね、試合終了まで30分となった時点で5尾の規定尾数に到達。逆境に立たされても心乱すことなく自身の釣りを貫く。これぞ経験に裏打ちされた自信と呼ぶべきものでしょう。

 

さて、これで勝負はわからなくなりました。釣っては釣られ、釣られては釣り返す。最終的に原田選手が12尾、下西ノ園選手が6尾の黒鯛を釣り上げたところで試合終了となりました。ルールに従い、3分以内に釣果を選り分け、フィッシュバッカンに5尾のみを残して他をリリースします。

 

検量の結果、原田選手が6,331g、下西ノ園選手が5,643g。ハイスコアでの競り合いは、688g差で原田選手に軍配が上がりました。初出場、そしてジャパンカップ黒鯛(チヌ)史上最年少での優勝。鳴り止まない賞賛の拍手。先輩選手からの手荒い祝福。新たなヒーローの誕生です。
中学生時代から憧れていたジャパンカップのチャンピオン。インタビューでの「この喜びをまず誰に報告したいですか?」との問いに、「僕に釣りを教えてくれた今は亡き祖父です」と答えた瞳の奥には光るものがありました。雲の上のお祖父さんは、お孫さんの活躍にきっと喜んでおられることでしょう。